鍼灸について


 鍼灸は、東洋医学或いは漢方医学の一分野として古代中国に起源をもつ我が国の伝統的医療であります。鍼灸は、日本に6世紀の初め飛鳥時代に仏教の伝来より11年遅く、漢方薬より先に渡来したと云われています。鍼灸と漢方薬は、中国の漢の時代にひとつに集大成されましたので今日では、漢方医学とも呼ばれています。
 現在では、諸外国(米国、ヨーロッパ各国)においても鍼灸が盛んになってきており、国際学会も開催され、公的な医学研究所・医科大学・鍼灸大学・鍼灸短期大学・医療機関等で科学的実験、研究がなされて鍼灸医学の効果が証明されてきております。





● 鍼(はり)
 初めは、できもの・腫れ物などを石の薄くとがった先で突いたり切ったりしていたものが、やがて、経験が積み重なって、気(エネルギー)が通る経絡という路が発見され、その路に気が溜まりやすい、気が漏れやすい、あるいは反応が出やすいツボ(経穴)というものが見つかりました。この経絡は五臓六腑といわれる体の内部である臓腑器官と体の外部である皮膚を結びつけることも分かってきました。(胃が悪いと背中の左側が張ってくることを経験した方もいらっしゃると思います。)
 この時代に治金技術の進歩があり、金属を細くすることが出来るようになりました。(漢代のお墓から、金製や銀製の医療用はりが発掘されています。)
 中国で完成された鍼術は、日本において改良が加えられて江戸時代に管鍼法という管の中に鍼を入れて2oぐらいの鍼の先端を打ち込む方法が発案されました。(皮膚を刺す痛みが少なく、この方法は普及し、現在ではほとんどの方が使っております。)また、日本の鍼は中国の鍼に比べて細く、材質もステンレスや金、銀など柔らかい金属で作られています。




● 灸(きゅう)
 人は、火の使用が始まって以来、活動空間が大幅に拡大されてきました。北京原人はすでに火を使っていたと云われています。中国伝統医学の言い伝えでは、きゅうは北京起源となっております。
 きゅうについて、子供の頃「悪い行いをするとおきゅうをすえる」といったことを聞いたことがあると思いますが、きゅうは熱いと感じられますが、柔らかい熱さで、熱さの加減ができ、経穴(ツボ)という点に刺激を与えます。その理想的な材質が艾(もぐさ)です。
 艾は荒地にでもどこにでも生えているヨモギから作られています。ヨモギの葉を乾燥させて、細かく砕き、ふるいにかけて葉の裏にある白い柔らかい綿毛を集めると艾になります。
 昔から、家伝のきゅう等と言って地域に密着した健康法であり、人々に愛好されてきました。一方、科学的研究においては、昭和年代に結核にきゅうの効果が認められたように、免疫作用や炎症との関係が考えられており、生理活性物質の解明がなされ、神経系・免疫系・内分泌系の相互研究へと推進しています。